令和7年度第21回野洲市人権教育研究大会9分科会(職場の人権教育)

日時

2025(令和7)年8月2日(土)

会場

コミセンなかさと 大ホール

テーマ

「オムロングループの人権の取組、障がい者雇用、女性活躍」

発表者

宮崎 ゆかり さん
オムロン株式会社野洲事業所所長

参加者

58名

オムロンは「人間性の尊重」を基盤に、障がい者雇用や女性活躍、人権尊重を通じて多様性を認め、イノベーションを創出する組織文化を実践しています。具体的には、自立支援を主軸とした障がい者雇用や、ライフイベントとキャリアを両立する多様な女性活躍施策を展開し、社会課題解決と企業の持続的成長を目指しています。

目次

オムロン株式会社の概要

歴史と社名の由来

1933年に大阪で「立石電機製作所」として創業。後に京都の「御室(おむろ)」に本社を移転したことが現在の社名の由来です。1970年には独自の未来予測理論(SINIC理論)を発表するなど、常に先行きを見据えた経営を行っています。

事業内容と強み

血圧計で世界シェア50%を誇る「ヘルスケア事業」も有名ですが、主力は売上の約6割を占める「制御機器事業(工場の自動化)」です。1967年に世界初の無人駅システム(自動改札機等)を開発するなど、社会を支える画期的な技術を次々と生み出してきました。

今後のビジョン

「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会の推進」「健康寿命の延伸」という3つの社会課題を特定し、モノ中心から「こころ中心」の社会へと変化する未来に向けて、技術による解決を目指しています。

オムロン野洲事業所の概要

沿革と現在の体制

2009年にオムロンの拠点としてスタートしました。かつては半導体事業が中心でしたが、現在は分社・譲渡を経て、主に「公共交通(社会システム)」「電子部品」「ソフトウェア」の事業を担っています。従業員は約1,000名で、開発と生産の両方の機能を備えています。

他社とのユニークな「同居」形態

事業譲渡したMMIセミコンダクター社と同じ敷地内にあり、正門や社員食堂を共有する一方で、電気の供給を受けるなど、他社と密接に連携・共存している非常に珍しい形態の事業所です。

主力事業と社会貢献

鉄道や橋梁のモニタリング、エネルギーマネージメントといった「社会システム事業」と、家電用スイッチなどの「電子部品事業」を展開。特にカーボンニュートラル実現に向けたエネルギー事業や、インフラの安全を守る最新技術に注力しています。

オムロンの人権・ダイバーシティへの取り組み

社憲「我々の働きで、よりよい社会をつくりましょう」

1953年に制定された社憲は、今も全社員の精神的支柱です。特筆すべきは、社会貢献だけでなく「我々の生活を向上し」と社員の幸せが明記されている点です。社員が生き生きと働いてこそ、持続的に社会へ貢献できるという考えが根底にあります。

3つのバリューズ(価値観)

「ソーシャルニーズの創造」「たえざるチャレンジ」「人間性の尊重」を大切にしています。特にチャレンジにおいては、7割の可能性があれば失敗を恐れず進む「7・3の原理」を推奨し、情熱を持った挑戦を後押ししています。

「人間性の尊重」と機械化の真意

オムロンが機械化を推進するのは「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な分野で活動すべき」という信念があるからです。機械が人の仕事を奪うのではなく、人が持つ無限の可能性を最大限に発揮できる環境づくりこそが、人権尊重の本質であると捉えています。

オムロンのダイバーシティ・インクルージョン

多様性の定義と受容

性別や年齢などの「表層的な違い」だけでなく、趣味や文化といった「深層的な違い」まで含めて認め合うことを重視しています。多様な個性がぶつかり合い、刺激や葛藤が起こることで新たな化学反応(イノベーション)が生まれる状態をD&Iと定義しています。

長期経営計画における位置づけ

2030年に向けた長期計画において、多様な人財を引き付け、個の能力を最大限に引き出す施策をグローバルに展開することを決定しました。多様な意見をぶつけ合い、その成果を分かち合うことが企業の存在意義に直結すると考えています。

求める人物像と個人の自律

社会課題を解決できる志を持ち、自らの専門性(スペシャリティ)を磨き続け、リーダーシップを発揮できる人財を求めています。会社任せにするのではなく、個人が自律的に輝くことが、より良い社会づくりへの挑戦には不可欠です。

オムロンの人権方針と2030年に向けた取り組み

バリューチェーン全体へのコミットメント

2030年を見据えた長期ビジョンにおいて、自社のみならずビジネスパートナーや販売店を含む「バリューチェーン全体」での人権尊重を掲げています。国際的なガイドラインに則り、人権方針を全ての関係者に理解・遵守してもらうための働きかけを継続しています。

経営と現場が一体となった推進体制

各執行部長が推進責任を持ち、重要事項は社長が取締役会へ報告・監査を受ける体制を構築。2023年度からは「人権担当役員」を設置し、経営層が本気で取り組む姿勢を明確にしています。

具体的な目標と6つの重点課題

2025年度に向けて、人権研修の受講率95%以上や労働環境のモニタリングを目標としています。特に「差別・不当な扱い」「ハラスメント」「テクノロジーの倫理的活用」など6つの重点課題を特定し、いかなる事由があっても個人の尊厳を傷つける行為を許容しない姿勢を徹底しています。

障がい者への理解とインクルーシブな環境づくり

無意識の偏見と差別的言動の排除

「普通ならできるのに」「この仕事は無理だ」といった能力に対する決めつけや、メンタル不調を「怠け」と捉えることは、偏見に基づく差別であることを正しく理解する必要があります。研修を通じて、自身の無意識な言動が相手を傷つけていないかを振り返ります。

具体的な支援と排除の防止

情報の共有から外したり、役割を与えず傍観者にさせたりといった「孤立」を招く行為を防ぎます。明確な指示が必要な場面では適切にサポートし、相手が能力を発揮できないことを本人の責任として責めない姿勢が求められます。

支援する姿勢と環境整備

偏見を避け、一人ひとりに適した支援を提供する「支援者」としての姿勢を持ちます。相談窓口や教育プログラムを積極的に活用し、誰もが個性を活かして働けるインクルーシブ(包摂的)な組織文化の醸成を目指します。

ハラスメント防止と心理的安全性の向上

無意識の威圧とハラスメントの防止

会議での叱責や見せしめのようなメール、大声での威圧といった行動をチェックリストで自省し、ハラスメントの根絶を図っています。特に上位職は、自身の言動が部下から見て高圧的になりやすいことを自覚し、感情に任せた指導にならないよう戒めることが求められます。

心理的安全性の構築

単なる「仲良しクラブ」ではなく、安心して意見を言い合い、互いを認めながら議論できる「心理的安全性」の高い職場づくりを推進しています。これにより、組織全体の成果や価値を高めるとともに、コミュニケーションの4つのステップ(知る・わかる・受け入れる・認める)を大切にしています。

相談体制と社外パートナーとの連携

ハラスメントの早期発見のため、社内の人権相談員や法務部門に加え、匿名性を担保した社外弁護士へのホットラインを設置しています。また、野洲事業所独自で協力会社(食堂、清掃、警備等)との「連絡会」を定期開催し、構内全体で人権や安全について考える体制を整えています。

オムロンの障がい者雇用の歴史と取り組み

「保護」から「自立」への転換と歴史

1972年、医師・中村裕氏と創業者・立石一真氏の出会いにより、日本初の福祉工場「オムロン太陽」を設立しました。「慈善事業ではなく、稼げる会社にする」という強い信念のもと、障がい者が「守られる存在」から「納税者(社会を支える側)」として活躍できる場を50年以上前から切り拓いてきました。

雇用の現状と今後の展望

現在の障がい者雇用率は3.48%と法定基準を上回っていますが、今後の法定雇用率引き上げや従業員の高齢化を見据え、継続的な採用活動を強化しています。現在は生産現場だけでなく、営業やスタッフ職など、全国の拠点で多様な職種に活躍の場が広がっています。

活躍を支える支援体制

「職場任せ」にせず、本人・上司・同僚に加え、専門の「生活相談員」や「ジョブコーチ」、医療職、ダイバーシティ推進部門が一体となってサポートする体制を整えています。ハード面(環境整備)とソフト面(日常的な声かけや相談しやすい関係性)の両輪で、個々の能力を発揮できるインクルーシブな職場づくりを追求しています。

女性活躍推進の考え方と取り組み

「100人いれば100通りの活躍」を目指す

女性の立場やライフステージ、価値観は多様であることを前提に、一人ひとりが自分に合った活躍の姿を描ける環境を重視しています。「ライフイベントを超えたキャリアアップ」と「会社への貢献の実感」の両立を目指し、会社と個人の双方が変革していくことを大切にしています。

育成のための具体的な施策

リーダー層の育成に向け、特定の個人に合わせた育成計画を実行する「バイネームでの育成」や、職場の上司ではない第三者が支える「斜めのメンター制度」、若手向けのキャリア研修などを展開。女性採用にも力を入れ、組織全体の多様性を高めています。

多様性を認める文化の実践

話し手自身が派遣社員からキャリアをスタートさせ、現在は重要な役割を担っている経験からも、オムロンが経歴や属性にとらわれず、意欲ある人にチャンスを提供し、多様性を認める文化があることを体現しています。

第9分科会についての感想や意見

No.感想や意見
1会社としてやっていることをご説明頂いたが、実際、当事者としてされていることがお聞きしたかった。
2講師の方の資料をいただけると、各職場等で伝達ができると思います。今後は検討してください。
3オムロンの人権に対する考え方がよくわかった。
4障害者雇用の部分では、賃金や仕事の継続性のところで課題になることも多いと思った。(作業所からの移行は難しさもある。)
5初めて企業研に参加し、学校とは違う仕事の内容、人権への取り組みが分かって勉強になりました。最後の質問内容が興味深かったです。来年も参加したいです。
6多様な意見をぶつけ合い、イノベーションを創造するという言葉が印象に残った。多様性は認めるもの、という考えよりも先を行っていると感じました。教育の中ではあまり触れることがなかった言葉だったので、新たな知見が得られました。
7企業での実情を聞けて良かった。
8企業における人権の取り組みは、学校でも大変参考になると思いました。知り合いがオムロンにいるので、また詳しく聞いてみようと思います。
9企業の取り組みの聞く機会がなかなかないので、とても有意義な時間になった。オムロン京都太陽について、初めて知ることができた。講演の中にもあったが、1人ひとりと話し、1人ひとりに合った方法を考え続けていくことが大切だと感じた。
10とても参考になった。企業も学校も個々に合わせて取り組んでいることがわかり、みんなで暮らしやすい、自分が輝ける環境づくりをしていきたいと考えた。
11企業での人権の取り組みを詳しくお話いただき、勉強になりました。
12障がい者雇用について、難しいかもしれませんが、どんな事例があるかが知りたかったです。
13営利団体の話は、我々にとって貴重な学びになる。
14具体的な事例を出していただければわかりやすかった。質問コーナーで詳しく知ることができた。オムロン太陽の家については検索して調べてみようと思いました。
15企業の社会貢献と人権との結びつきがわかりました。
16校・園以外の一般企業の取り組みについて知ることができる機会は貴重でした。
17パワーポイントの文字が全く見えなかったので手元に資料が欲しかったです。
18企業における社員教育の実際を知ることができ、非常に有意義な時間になった。現場に還元できる内容が多かった。スライド資料をじっくり拝見したい。
19発表を聞いて、社会貢献や世の中の先端的な取組をされているように感じました。表面的なこと以外に、「もう少し具体的にどういうことがあって、どう対処しています」「障害者については、障害の度合いがどの程度まで採用されるのか」みたいな話があれば、深く考えることができたかと思います。
20学校現場以外での人権の取り組みについて聞く機会がこれまでなかったので、ありがたかったです。
21パワーポイントの資料がほしかった。全体を通して、市内の人権意識が低くなってきていると感じている。人権の町と言われているのに…このままでいいのかと疑問に思う。
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