第22回野洲市人権教育研究大会

野洲市企業人権啓発推進協議会と野洲市教育委員会・野洲市人権啓発推進協議会・滋賀県人権教育野洲研究会の共催、野洲市後援により、第22回野洲市人権教育研究大会が開催されました。

開催日

2026年8月1日(土)

会場

コミセンきたの 研修室

目次

大会内容

1.全体会   開会行事  基調報告 記念講演  (DVD視聴にて実施)

記念講演

「インターネットによる人権侵害~ネット被害から子どもを守れ~」

講師

佐藤 佳弘 さん
株式会社情報文化総合研究所 代表取締役 
武蔵野大学名誉教授

2.第9分科会 職場における人権教育 (野洲市企業人権啓発推進協議会が担当)

テーマ

「おたがいさまと少しのおせっかい~人権の取り組みが育む、働きやすい職場づくり~」

発表者

髙岡 季博 さん
社会福祉法人野洲市社会福祉協議会事務局長

1-1 全体会 開会行事 あいさつ 大会実行委員長 山口孝志 野洲北中学校校長

皆様、本日はお忙しい中、「第22回野洲市人権教育研究大会」にご参加いただき、心より感謝申し上げます。本大会は、同和問題をはじめとするあらゆる人権問題への正しい理解を深め、お互いを認め合い、尊重し合う人間関係と社会環境の創造を目指して、これまで継続してまいりました。本市では、過去の差別事件の教訓を真摯に受け止め、あらゆる差別の解消に向けて長年取り組んでまいりました。しかしながら、今日においても、いじめや虐待、貧困など、子どもたちを取り巻く課題は依然として深刻な状況にあります。特に、インターネットやSNS上での人権侵害は、学校現場においても対応に大変苦慮している、極めて難しい問題となっています。そこで本日は記念講演として、武蔵野大学名誉教授の佐藤佳弘様をお迎えし、ネット上の人権侵害の現状と対策についてお話を伺います。スマートフォンやインターネットが日常生活と切り離せない現代社会において、私たちがいかにして人権を守り、育んでいくべきかを考える、非常に重要な機会であると確信しております。本大会が、皆様お一人おひとりにとって自らの生き方を見つめ直し、日々の人権尊重の実践へとつながる確かな契機となることを心より願いまして、開会の挨拶といたします。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。

1-2 全体会 基調報告要約

① はじめに(大会の目的と基本方針)

本日、第22回野洲市人権教育研究大会が開催された。本大会は「差別の現実から深く学び、生活を高め、未来を保証する教育を確立しよう」を主題に掲げ、「反差別の学校、園、所、企業、事業所、地域社会を目指して」を副題として、長年にわたり研究実績を積み重ねてきたものである。同和教育の深まりから人権教育への広がりを主軸とし、人権教育の推進、仲間作り、進路保障など、人権文化の創造に向けた弛まぬ取り組みが続けられている。

② 野洲市における行政および教育現場の取り組み

野洲市においては、令和8年3月に「第5次人権施策基本計画」を定めている。市民と行政が共同し、すべての人が尊厳を持って生きられる社会づくりに向けて、教育啓発活動を一層推進していく方針である。同時に、市民に寄り添う相談支援体制の充実を図り、誰もが人権を尊重され、支え合って暮らす共生社会の実現を目指している。また、市内の各校・園・所においては、1988年に発生した「野洲中学連続差別事件」を厳粛な教訓として受け止め、人権教育をすべての基盤とした学校・園・所づくりに持続的に取り組んでいる。

③ 現代社会における深刻な人権課題とその背景

現代社会における子供たちの周辺には、いじめ、虐待、貧困、ヤングケアラーの問題など、命を奪われかねない深刻な人権課題が山積している。さらに、インターネット上の悪質な書き込みや、間違った知識・偏見に基づくヘイトスピーチなどを通して、部落差別や在日外国人、障害のある人に対する差別が助長・拡散されるという厳しい現実がある。加えて、性的少数者の人権、女性の人権、高齢者の人権、ハンセン病に関する人権問題など、人権が尊重されていない実態も次々と明らかになっている。

これらの背景には、予断や偏見から生じる差別意識や無理解だけでなく、「自分は差別をしていないから関係がない」という他人事意識が存在する。さらに、人と人とのつながりの希薄さや、格差が放置された不安定な社会状況が、問題の解決を一層難しくしている。

④ 関連法の施行状況と今私たちに問われていること

2016年に成立・施行された「部落差別解消推進法」「障害者差別解消法」および「ヘイトスピーチ解消法」の施行から10年が経過した。これまで差別解消に向けた実効性のある施策の実施が求められ、様々な取り組みがなされてきたものの、未だその根本的な解消には至っていない。現に、この10年の間にも野洲市内で部落差別に関わる差別発言事象が起こっている。この事実は、学校、園、所、企業、事業所、家庭、地域社会に関わる一人一人の切実な課題として認識しなければならない。子供たちと向き合う私たち大人が、差別問題とどのように向き合い、その解消にどのように関わっていくのか。これまでの10年を真摯に振り返り、この先の10年のあり方を主体的に考えることが、今まさに私たちに問われている。また、2023年には「子ども基本法」が施行された。同法では、すべての子供が大切にされ、基本的な人権が守られ、差別されないことが明記され、子供の意見を聴取し施策に反映させることが義務付けられた。子どもの人権を守るための教育や人権啓発の推進もまた、私たちの重要な責務である。

⑤ 差別問題解消に向けた具体的実践方針

本大会が、部落差別をはじめとするあらゆる差別問題の解消に向けた参加者自身の連帯を確認する場となり、深い学びと啓発の場となるよう、以下の2領域において具体的な方針を推進していく。

(1)就学前学校教育における取り組み

  1. 実践的態度の育成
    すべての教育活動を通じて人権・同和問題についての判断力、スキル、技能、態度、正しい知識や理解を養い、差別をなくす実践的態度の育成を図る。
  2. 豊かな仲間づくりの推進
    命の大切さや人権を尊重する精神を養い、自尊感情を高め、互いの持ち味やありのままの姿を認め合う仲間作りを進める。
  3. 生活習慣の定着と連携強化
    一人一人の子供の背景や実態を的確に把握し、学校、園、所、家庭、地域社会が密に連携し、生きる力の基盤となる基本的な生活習慣の定着を図る。
  4. 確かな学力と進路保障
    子供たちの学習意欲を高め、確かな学力を身につける具体的な取り組みを通して、一人一人の確実な進路保障につなげる。

(2)社会教育における取り組み

  1. 人権尊重の街づくりの推進
    部落差別をはじめ、私たちの社会に存在するあらゆる差別をなくすために具体的な行動を起こし、人権尊重の街づくりを推進する。
  2. 啓発機会の確保とリーダー育成
    地域や企業、団体、事業所における人権啓発の機会確保とリーダーの育成に努め、社会や家庭における差別をなくす取り組みを一層進める。

⑥ 総括と宣言

一人一人が尊重され大切にされる社会とは、いじめや差別が存在しない社会である。今こそ、職場、学校、園、所、家庭、企業、事業所、地域社会のあらゆる場において人権・同和教育の取り組みを広げ、人と人とのつながりを深め、差別のない社会を実現していかなければならない。

ここに、私たち一人一人が固くつながり、反差別の社会の構築を力強く推進していくことを確認し、第22回野洲市人権教育研究大会の基調報告とする。

1-3 全体会 記念講演

テーマ

「インターネットによる人権侵害~ネット被害から子どもを守れ~」

講師

佐藤 佳弘 さん
株式会社情報文化総合研究所 代表取締役 
武蔵野大学名誉教授

便利さの背後に潜む危険

本日は「インターネットによる人権侵害」というテーマでお話をさせていただきます。

今やインターネットは、子どもから大人まで、誰もが日常的に使う道具になりました。私の自宅は神奈川県にあり、いつも東横線の綱島駅から電車に乗って仕事に向かっているのですが、車内を見渡すと、大人も子どもも皆あの小さなスマートフォンの画面に夢中になっています。確かにスマホは、いつでもどこでもネットに繋がる大変便利な道具です。しかし、便利だということは、その背後に「同じ大きさの危険」が潜んでいるのだということを、ぜひ知っていただきたいのです。どのような危険があるのだろうかということを、ぜひ一緒にお考えになりながら、この先の私の話を聞いていただければ幸いです。

本日は、お話を大きく3つのパートに分けて進めさせていただきます。

  • 第1のパート:ネット上での人権侵害の現状と最新の事例
  • 第2のパート:ネット被害・加害の未然防止策(情報モラル教育)
  • 第3のパート:万が一、実際に被害に遭ったならば大人はどう対処すべきか

ネット上での人権侵害の現状と事例、加害者の心理-ネット人権侵害の「9つの分類」と差別の実態

一口にネット人権侵害と言いましても、その形は様々です。これらを分かりやすく分類すると、次の9つに分けることができます。

  1. 侮辱
  2. 名誉毀損(※1、2はSNS上の中傷投稿問題が該当します)
  3. 信用毀損(役員・従業員への誹謗中傷や、製品への悪評による風評被害など)
  4. 脅迫
  5. 個人情報やプライバシー情報の無断書き込み(晒し被害)
  6. ネットいじめ
  7. 児童ポルノ(日本は他国から「児童ポルノ大国」と批判されるほど深刻です)
  8. ハラスメント(セクハラ・パワハラなど)
  9. 差別

この中の「差別」も多岐にわたります。日本には同和問題という部落差別が存在しています。また、外国人に対するヘイトスピーチ、障害のある方や生活困難者への差別、女性への偏見、さらにはここ数年の「コロナ差別」も記憶に新しいところです。そして、性的マイノリティ(LGBTQ)の方々への差別や嫌がらせも後を絶ちません。最新の42万人規模の社会調査によると、日本にはLGBTQの方が「約10%(10人に1人)」いることが分かっています。これは「左利きの方」の割合とほぼ同じです。学校で40人のクラスを受け持ったならば、その中の3人か4人は当事者である可能性があるということを、私たちは正しく認識して教育に当たらなければなりません。

他にも、性同一性障害の方、アイヌの方々、犯罪被害者など、差別偏見の被害を受けている方は決して一部の限定された分野の方々ではないのです。本日は子どもたちも被害者や加害者になる可能性が非常に高い「SNS上での誹謗中傷問題(侮辱・名誉毀損)」に焦点を絞ってお話しします。

(1)データで見る誹謗中傷と、命を奪う凄惨な事例

総務省の調査によると、この1年間にSNSで中傷被害を受けた人は全体の8.9%に上ります。実におよそ10人に1人がこの1年間に被害を受けているのです。日本の人口に換算すれば、年間で約1000万人の人が被害に遭っているという計算になります。

特に、有名になった方や注目された方は、ほとんどが標的になります。パリオリンピックの際、柔道の阿部詩選手が敗退した直後に「観光ですか」といった中傷が行われ、国際オリンピック委員会はアスリートへの不適切投稿が8,500件を超えたと発表しました。芸能界でも、堀ちえみさんが約2年間に1万6,000件もの中傷を受け、タレントのryuchell(りゅーちぇる)さんは「死ね」といった執拗な書き込みに晒され続けた末に命を落とされました。信じがたいことに、亡くなった後でさえネット上には「死んでくれて嬉しい」といった残忍な言葉が書き込まれ続けたのです。

また、池袋の暴走事故で妻子を亡くされた遺族に対し、「金目当て」「新しい女を作ればいい」といった、言葉を失うような中傷が行われました。そして、社会に大きな衝撃を与えたのがテレビ番組に出演していた女子プロレスラー、木村花さんの事件です。木村さんはわずか3ヶ月の間に、約200人の見ず知らずの人たちから「お前が早くいなくなればみんな幸せ」「マジで早く消えてくれ」といった中傷を毎日浴びせられ、22歳という若さで自ら命を絶ちました。木村さんは亡くなる直前、お母さんの響子さんに「ママごめんね。もう頑張れない」というメッセージを残しています。私はお母さんの響子さんに直接お会いして話を伺ったことがあります。響子さんは「私が失ったのは娘の花だけではない。これから先、一緒に作るはずだった未来の思い出もすべて失ったんだ」と、深い悲しみを語っておられました。人が命を落とすほどの中傷は、社会的に決して許されるものではありません。

木村花さんを中傷していた男は侮辱罪で書類送検されましたが、当時の刑法での罰金はわずか9,000円でした。このあまりに軽すぎる刑罰に対し、お母さんの響子さんは厳罰化を求めて活動を始められましたが、信じがたいことに、その活動に対してさらに中傷する男が現れ、再び書類送検されるという事態が起きました。こうした命がけの訴えが実を結び、2022年7月に刑法が改正され、侮辱罪の刑罰は「1年以下の懲役・禁錮、または30万円以下の罰金」へと強化されました。しかし、この程度の厳罰化だけでネット上の中傷が収まるはずがなく、今でも被害は増え続けています。

(1-1) 一般人を巻き込むデマ拡散と「加害者の心理」

最近では、有名ではない無関係の一般人が、デマによって甚大な中傷被害に遭う事例も発生しています。その代表的なものが「常磐道あおり運転事件」の際、犯人の車に同乗していた無関係の女性が、Instagramの自撮り写真が「似ている」というだけの理由で、実名や顔写真とともに「ガラケー女」としてネット上に拡散されてしまったケースです。拡散された当日だけで迷惑電話が280件、中傷メッセージは1,000件、1週間で10万件もの投稿に晒され、勤務先にも300件の嫌がらせ電話が入り、仕事もできなくなりました。

ここで私が本当にお話ししたいのは、「自分はそんな被害に遭う確率は低いだろう」と傍観することではありません。怖いのは、出回ってきたデマ情報を見て、善意や正義感から「自分も再投稿(シェア)して拡散に加担してしまう行為」です。事実、この事件では、善意のつもりで「早く逮捕されるよう拡散お願いします」と写真を転載して投稿した一般の人々が、のちに名誉毀損罪と認定されています。ネット上の中傷は通常「侮辱罪」ですが、このように事実無根の情報を流して他人の社会的評価を落とした場合は、より罪の重い「名誉毀損罪」に問われることがあります。

では、なぜ人はネット上に中傷を書き込んだり、拡散したりするのでしょうか。調査結果を見ると、最も多い動機は「相手に対する嫌がらせ」や「イライラ」ではなく、実は「ひずんだ正義感」なのです。加害者の57〜71%、つまり半数以上が「あいつは悪いことをした、間違っている、だから自分が代わりに注意してやるのだ(正当な批判だ)」と思って投稿しています。自分自身が「中傷している(加害者である)」という自覚が一切ないこと、これこそがネット中傷問題の最も根深く、恐ろしいところなのです。

(1-2) 学校現場における「ネットいじめ」の深刻な実態

子どもたちの間で深刻化している「ネットいじめ」の実態についても触れておきます。文部科学省の最新の調査によると、小学校から高校における1年間のネットいじめ認知件数は、2万7,365件に上っています。しかし、ここで私たちが強く警戒しなければならないのは、この数字はあくまで「大人が認知できた数」にすぎず、実際は氷山の一角だということです。なぜなら、ネット上でトラブルや被害に遭った子どもたちは、親や教師にほとんど報告しないからです。実態調査を見ても、被害を学校の先生に相談した割合は小学生で14.4%、中学生にいたってはわずか9.4%とおよそ1割にとどまっています。実際の被害はこの10倍、つまり数十万規模で起きていると認識すべきです。さらに危機的なのは、この認知件数がここ10年で3.5倍に急増しており、特に小学校においては、同じ期間になんと7.4倍という異常なペースで増え続けています。スマホやネット利用の低年齢化を背景に、私たちの目の届かないところで、これほど多くの子どもたちが傷ついているという現実を、私たちは重く受け止めなければなりません。

(2) ネット被害・加害の未然防止策(情報モラル教育の6つのポイント)

第2のテーマである「ネット被害の未然防止策」についてお話しいたします。未然防止策を進める上で重要なのは、ネット利用者自身、自治体、警察、サービス事業者、国など、それぞれの立場に応じた役割があるということです。その中でも特に、児童生徒が被害に遭わないように「教育機関(学校)」にできることについて、重要なポイントを6点ご紹介します。

(2-1)学校の教えとネット社会(美徳のギャップ)

教育関係者の皆様はよくご存じの通り、子どもたちは非常に素直です。しかし悲しいことに、学校での正しい教えをネット社会でそのまま正直に守ってしまうと、子どもたちは一瞬にして被害者になってしまいます。現実社会の美徳が、ネット社会では命取りになりかねないのです。具体的に4つのギャップを挙げます。

①「人には親切にしなさい」のギャップ

ネット社会では、相手に対して安易に親切にしてはなりません。

②「呼ばれたら返事をしなさい」のギャップ

ネットでは「間違いメール」を装う詐欺メールが多発しています。私が千葉県の小学校で「スマホに間違いメールが入ったらどうするか」というアンケートをとったところ、驚くことに多くの児童が「宛先を間違っていますよ、と親切に教えてあげる」と答えました。早く返信してほしいという切実な文面に騙されてしまうのです。こうした間違い メールには「絶対に返信してはならない」と教える必要があります。

③「困っている人がいたら助けなさい」のギャップ

ネット上の悪人は、困っている人や悩んでいる人のふりをして優しさに付け込んできます。「もし助けたいと思う人がネットにいたら、自分で解決しようとせず、必ず保護者や先生に相談する」よう指導してください。

④「間違っているなら言いなさい」のギャップ

現実では黙っていると認めたことになると教えられますが、ネット上で理不尽なことを言われても、決して反論や抗議をしてはなりません。反応すれば相手はさらに投稿をエスカレートさせるだけです。ここでやるべき対応は徹底した「スルー(無視)」であり、どうしても困ったら大人に相談させ、自分で動かさないことが鉄則です。

(2-2)子ども主体でのルール作り

ネットを使う時のルールが必要ですが、このルールは大人から一方的に押し付けないでください。子ども主体で作ってもらうための手順は、次の2ステップです。

  1. ステップ1:現状(危険やトラブルの事例)を知らせる
  2. ステップ2:それをもとに話し合ってもらう

危険な現状を知った上で話し合いを行えば、使い方の決まりや注意事項が、必ず子どもたちの口から自発的に出てきます。それらをルールとしてまとめ、全校に展開していくのです。こうして自分たちで作ったルールだからこそ、強い当事者意識が生まれます。そして、一度ルールを作って安心するのも禁物です。ネットのサービスやスマホのアプリは毎年進化しています。だからこそ、作ったルールは毎年度必ず、子どもたち主体の手で見直してアップデートしていっていただきたいのです。

(2-3)情報リテラシー教育(活用能力の育成)

現在、すべての子どもたちがタブレット端末を持つなど、学校でのICT環境は一気に進みました。これからネット社会を生きる子どもたちにとって、端末の操作能力(スキル)を身につけることは必須です。しかし、それだけでは足りません。大量の誤情報や偽情報を見極め、上手に危険を避けて使いこなす「活用能力(情報モラル)」こそが重要なのです。信じられないかもしれませんが、今や10代のほとんどがChatGPTなどの生成AIを使い始めています。これら最新の技術とどう付き合うかという情報モラルも、重要な能力として教えていく必要があります。

(2-4)外部の知見を借りる「ネット安全教室」

私もかつて学校現場で教員をしておりましたので、先生方がどれほど多忙であるかは痛いほどよく分かります。授業の準備、生活指導、行事の運営、保護者対応に加え、部活や職員会議など、文字通り目が回るほどの仕事を抱えています。この忙しさの中で、日進月歩で進化するネットやスマホの知識をアップデートし、情報モラル教育まで完璧にこなせというのは、はっきり言って至難の業です。先生はオールマイティではありません。そこでお勧めしたいのが、外部の知見を借りる「ネット安全教室」の実施です。専門家を学校に招き、交通安全教室と同じような位置づけで、夏休み直前の1時間だけでも結構ですので毎年度実施していただきたいのです。その場に教職員や保護者も同席すれば、大人側も一度に最新の情報を手に入れることができます。このネット安全教室を行う上で、極めて重要なコツがあります。それは、ただ抽象的に「危ないぞ」「危険だぞ」と脅すだけで終わらせないことです。本当に子どもたちの身を守るためには、「具体的な被害事例」をしっかりと教え込んでください。具体的な事例が子どもたちの頭の中の引き出しにストックされていれば、彼らがネット上で何か行動を起こそうとした瞬間に、「あ、これはあの事件と同じだ」とその引き出しと照らし合わせ、自ら踏みとどまる判断ができるようになります。

私が昨年7月に埼玉県の草加市の中学校で、全校生徒700人を集めて「ネット安全教室」を行った際、自宅に700枚の感想文が届き、1枚1枚すべて目を通しました。そこで本当に驚いたのは、多くの中学生が「今まで先生や親から『危ないからやめろ』『ダメだ』と何百回も注意されてきたけれど、なぜ危ないのか、その本当の理由が今日初めて分かった」と書いていたことです。ただ抽象的な言葉で禁止するだけでは、子どもたちの心には届いていないのだということを、私たち大人はよく認識しなければなりません。

(2-5)2種類のガイドラインの整備

子どもたちには、SNSの使い方のガイドライン(ソーシャルメディア利用ガイドライン)を作って渡してください。盛り込む内容は法令遵守など当たり前のことばかりですが、子ども向けには分かりやすく優しい言葉に噛み砕いて、A4用紙1〜2枚程度にまとめてください。ネットにたくさんサンプルがあります。ここで重要なのは、「教職員向け」と「児童生徒向け」の2種類を必ず作成するということです。なぜ教職員向けが必要かと言えば、残念なことに、教職員自身の不適切な投稿によってネットが炎上し、学校のブランドイメージを著しく失墜させてしまう事例が後を絶たないからです。ガイドラインを整備することは学校としての義務でありマストです。なぜなら、万が一大きなトラブルが発生した際、ガイドラインすら整備していなかったとなれば、「この学校は一体どんな危機管理をしていたのか」と、学校の管理責任を二重に問われることになるからです。いわば、学校という組織と子どもたちを守るための「保険」として、必ず整備を進めていただきたいのです。

(2-6)多様な視点の学習(多角的認知)

これは特に、子どもたちが中傷の加害者になることを防ぐための極めて重要な教育です。子どもたちには、物事を一方的な見方だけで決めつけない習慣を身につけさせてください。前述の通り、中傷している人間の半数以上は、加害者としての自覚がまったくありません。「自分は正しい、相手が間違っている」という一方的な思い込みと、ひずんだ正義感から刃のような言葉を書き込んでいるのです。だからこそ学校では、物事にはいろいろな見方があるのだということ、そして「立場が違えば、見え方も全く変わるのだ」ということを丁寧に教えていただきたいのです。「一方的に決めつけてはいないか?」「本当に自分の方だけが正しいのだろうか?」と、一歩立ち止まってよくよく考える習慣。この「多角的認知」の心の習慣を育てることが、ネット上の人権侵害を根絶する強力な抑止力となります。学校にできる未然防止策、それはこうした教育・啓発を地道に愚直に繰り返していく、教育界の王道を進むことなのです。

(3)万が一、実際にネット被害に遭ったときの正しい対処法

最後のテーマである「もしもネット被害に遭ってしまったなら、どのように対処すべきか」についてお話しいたします。ここでも様々な分野に応じた役割がありますが、特に「教育界(学校)」として取るべき、実務上極めて重要な対応をお話しします。

(3-1)学校が取るべき「立ち位置」の鉄則(代行の厳禁)

ネットトラブルが発生した際、学校が取るべき基本的な考え方として、被害に遭った子どもや保護者に誠意を持って寄り添い対応することは当然です。しかし、ここで絶対に誤解してはならないのは、「自治体や学校はトラブルの当事者ではない」ということです。ネットトラブルにおける当事者とは、あくまで「被害者」「加害者」「ネットのサービス事業者」の3者だけです。この大前提を明確に認識して対応に当たってください。 「当事者ではない」ということは、一体何を意味するのでしょうか。それは、被害に遭った子どもを助けたい一心であっても、良かれと思って学校が「削除手続き」や「発信者情報の開示請求」を代行することは絶対に厳禁である、ということです。これらの法的・技術的な手続きを行えるのは当事者本人、あるいは当事者から正式に委託を受けた弁護士だけです。もし先々で裁判(訴訟)になった場合、親切心のつもりで手続きを代行してしまった学校や自治体側が、なんと「被告」として訴えられる恐れがあります。実際に、善意の代行が原因で被告になってしまい、頭を抱えている自治体の事例も実在するのです。しかし、これは「問題を放置しろ」という意味では決してありません。削除に関わってはいけないのではなく、手続きを進めるのはあくまで当事者の仕事である、というルールを認識していただきたいのです。学校が果たすべき本当の役割は、「適切な相談窓口を迅速に案内すること」です。このとき、絶対にやってはならないのが、被害に遭った子どもや保護者に対して「ネットを見なければいいんだよ」などとアドバイスすることです。これは被害者にとって、まさに「絶望のアドバイス」と言われています。なぜなら、ネットの悪質な投稿を放置するということは、時間の経過とともに被害が世界中に拡大していくことを意味するからです。見るのをやめても問題は解決しません。「ネットを見なければいい」という言葉は、傷ついた子どもを突き放す、完全な無責任極まりないアドバイスなのだと肝に銘じてください。

(3-2)案内すべき「3つの適切な相談窓口」

学校が子どもや保護者に案内すべき窓口は次の3カ所です。これらにはすべて専門家がおり、無料で相談を受け付け、具体的な助言をくれます。

  1. 総務省の支援事業「違法・有害情報相談センター」
  2. 法務省の「人権相談窓口」
  3. セーファーインターネット協会の「誹謗中傷ホットライン」

特に「違法・有害情報相談センター」では、専門知識と経験を持った相談員が、無料で、かつネットから簡単に相談に応じてくれます。例えば、中傷が書かれたサイトを個別に確認し、そのサイトの利用規約やポリシーに沿った確実な削除依頼方法を案内してくれます。管理者の連絡先が非公開のサイトであっても、依頼先を調査した上でアドバイスを授けてくれるのです。さらに、警察や法務局、セーファーインターネット協会、消費生活相談窓口などの関係機関とも緊密に連携し、相談者に寄り添った解決方法を示してくれます。もしミュートやブロック、削除依頼だけでは解決しない場合には、匿名の発信者を特定して損害賠償請求を行うためのサポートも可能です。令和4年10月の法改正により、匿名の発信者を特定するための裁判手続きが大幅に簡略化されました。これにより、個人の氏名や住所が晒されたり、画像が無断投稿されたり、お店へのデマが広がったりした際にも、より迅速に発信者を突き止めることが可能になっています。

ここで一つ、皆様に強くお願いしたい注意点があります。それは、トラブルが起きた際に「決してネットで対処法を検索させないでください」ということです。ネット上には知ったかぶりの間違ったアドバイスが溢れており、それに従って行動するとかえって事態を悪化させ、大怪我をすることになります。必ずネット検索に頼らず、ご紹介した専門窓口に直接相談するようお伝えください。

(3-3)ネット削除の「厳しすぎる現実」

皆様には、ネット削除に関する厳しすぎる現実も知っておいていただかねばなりません。実は、SNS各社も削除窓口を持ってはいるものの、その削除率は異常に低く、個人からの依頼はほぼ相手にされません。弁護士に高額な費用を払って依頼したとしても、削除率はX(旧Twitter)でわずか0.2%、SNS各社の平均でも1.1%程度です。「普通に頼んでもまず消えない」と思っておいた方が現実的です。法務局から事業者へ「削除要請」を出してくれることもありますが、この要請には一切の法的強制力がなく、従わなくても事業者への罰則はありません。そのため、必ず削除される保証はないのです。どうしても、確実に削除したい場合の「最終手段」はただ一つ、裁判所に「削除の仮処分」を申し立てることです。これも裁判手続きですから弁護士費用がかかりますが、裁判所から「仮処分命令書」が出れば、司法の力によって事業者は必ず削除に応じます。ただし、この手続きも動かせるのは当事者本人のみであり、法務局が代行してくれるわけではありません。さらに絶望的なのは、これほどのお金と労力をかけて何とか削除させても、加害者から再び投稿されれば、また1からやり直しになるという点です。「ニュースで『1週間で削除できる新しい法律』ができたと聞いたぞ」と思われるかもしれません。令和6年に成立した「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」のことですね。しかし、これも誤解しないでください。この法律は事業者に迅速な対応窓口の設置などを求めているものの、削除そのものを義務づけた法律ではありません。相変わらず確実な削除を求めるには、被害者自身が裁判所の仮処分や訴訟を起こす必要があるため、実効性はきわめて限定的です。ネットの削除はそれほどまでに難航するのだということを、ぜひ強く認識してください。

(3-4)学校現場における具体的な場合分け対応と組織防衛

ネット上のトラブルは複雑ですので、状況を整理するために「場合分け」をして具体的な初動対応をお話しします。

①【場合分けA】発信者が「学内の児童生徒」だと分かっている場合

身内の友人関係のトラブルだと判明しているケースです。

・教育的指導の実施

たとえネット上の出来事であっても、現実のいじめと同様に通常の教育的指導やカウンセリングを即座に実施してください。

・その場での即時削除

ネット上の悪質な書き込みをその場ですぐに削除させてください。ある学校では、関係した生徒たちを校長室に集め、その場でスマホを操作させて投稿を削除させたという事例もあります。時間が経てば経つほど、情報は外へと拡散してしまうからです。

・スクリーンショットでの証拠保全

「すぐ削除させたら証拠隠滅になるのではないか」と心配される先生がいますが、心配は無用です。削除する前に、問題の画面を「スクリーンショット」で撮影して証拠として保存しておけば、ネット上のデータはすぐに消してしまっても法的な問題はまったくありません。まずはスクショで証拠を抑え、即座に削除させて被害の拡大を食い止める。これが学校現場における鉄則です。

②【場合分けB】児童生徒・保護者への継続的なケア

最も忘れてはならないのが「被害を受けた児童生徒の心のケア」です。子どもが孤立してしまわないよう、トラブルが表面化した後も継続的に声をかけ、徹底して寄り添い続けてください。また、被害児童生徒やその保護者に対して状況を説明する際には、「今後どのような再発防止策をとるのか」をあらかじめ具体的に決めておき、その取り組みも同時に説明して安心感を与えることが必要不可欠です。

③【場合分けC】大きな問題になり、マスコミに扱われた場合(組織防衛)

トラブルが大きな問題へと発展し、マスコミに報道されるなど世間に広く知れ渡ってしまった場合には、学校としての「公式見解」を毅然と発信しなければなりません。発信の場としては、学校の公式サイトを活用するのが適切です。事態があまりにも重大なときは記者会見を開くこともありますが、通常は公式サイトを通じて正確な事実と方針を世間に伝えることが求められます。なぜなら、トラブルに関係している学校名が特定されると、今度はその「学校自身」に対する誹謗中傷や、事実無根の悪評がネット上に溢れかえる二次被害が起きるからです。学校の信用を毀損するような投稿が始まった場合、被害者は子どもたちではなく「学校という組織」になりますので、学校自身が主体となって対処しなければなりません。もしそのような書き込みが見つかりましたら、まずは「これ以上の投稿を続ける場合は、然るべき法的措置を取ります」という強い警告のメッセージを公式サイト等で打ち出してください。それでもなお中傷が止まない場合は、速やかに削除申請の手続きを進める必要があります。

④教育委員会・警察との正しい連携基準

ネット固有の複雑なトラブルに対し、学校が一人で抱え込み、解決しようと奔走する必要はありません。認識したならば、直ちに関係機関と連携してください。

・教育委員会との連携

トラブルを認識したならば、速やかに教育委員会と連携をしてください。ただし、教育委員会も当事者ではありませんので、学校の代わりに削除手続きを行うことはできないという点は知っておいてください。

・警察署への通報(犯罪性がある場合)

トラブルの内容に「犯罪性」が認められた場合は、迷わず警察署へ通報してください。例えば、騙されて自らの下着姿の写真を送ってしまった「児童ポルノ事案」や、ネット上で多発している「児童誘引・援助交際」の事案です。今やネット上には、それらを結びつける専用の援助交際アプリまで存在しています。他にも「恐喝」や「詐欺」など、これらはすべて警察の管轄です。

・警察署への通報(重大ないじめの場合)

「いじめ」であっても、子どもの身体や生命、財産に重大な損害を与えるような重大事案である場合は、「いじめ防止対策推進法」に基づき、学校から警察署へ通報することが義務づけられていますので、警察に通報して対処してもらってください。

最後に大人が連携して子どもたちを守るために

ネット固有の複雑なトラブルに対し、学校がパニックになったり、良かれと思って一線を越えて代行手続きをしてしまったりする必要はありません。正しいスタンス(学校は当事者ではない)を毅然と守り、専門の相談窓口を正しく案内し、必要であれば教育委員会や警察といった組織の力を借りて対処する。そして何より、地道な「情報モラル教育」を学校の王道として繰り返していくこと。これこそが、現代のネット社会において、子どもたちと学校組織の双方を守るための確実なロードマップなのです。

2 第9分科会 職場における人権教育

テーマ

「おたがいさまと少しのおせっかい~人権の取り組みが育む、働きやすい職場づくり~」

発表者

髙岡 季博 さん
社会福祉法人野洲市社会福祉協議会事務局長

野洲市社会福祉協議会の組織や人権研修の取り組みを紹介し、それが結果として職場の「働きやすさ」にどうつながるかを皆さまと共有します。野洲市社会福祉協議会は、災害ボランティアセンターの運営なども担う公益性の高い民間団体(通称:社協)であり、全国の市区町村や都道府県の枠組みと連携しながら地域福祉を推進しています。

社協の理念である「すべての住民が主役」

社会福祉協議会は「地域に関わる全員」を主役に、個々の困りごとや希望に寄り添いながら、一部のリーダーに頼るのではなく、100人が1歩ずつ無理なく力を合わせることで、細く長く続く「地域力」の底上げと豊かな地域社会の実現を目指しています。

野洲市社協オリジナルの理念と、日々の行動指針である「基本方針」

野洲市社協は、市と作った「すべての人がともに支え合い安心して暮らせるまち」という基本理念のもと、その実現に向けて職員一同が常に「おたがいさま」と「少しのおせっかい」の精神を頭に置きながら、住民へその輪を広げるべく日々の業務に取り組んでいます。

なぜ「少しのおせっかい」が必要なのか

「野洲市地域福祉基本計画」のアンケート結果によると、困っている人を「助ける」という回答は95%にのぼるが、自身が困ったときに「助けて」と声を上げられない人も95%を占めている。この結果は、多くの人が「頼まれたら助ける」という受け身のやさしさを持ち、自ら助けを求めることへの心理的障壁が高いという地域の課題を示している。このアンケートデータは、なぜ「少しのおせっかい」が必要なのか、その理由を明らかにしています。

野洲市社協の多様な仕事内容と、それを支える組織の全体像について

野洲市社協には5つの専門部署があり、資格を持ったプロを含む職員や役員など総勢約250名が在籍しています。それぞれ担う役割は異なりますが、全員が「地域の困りごとを住民と一緒に考えて支える」という共通の目的のもとで活動しています。共通の使命:職種は異なっても、全員が「地域の困りごとを住民と一緒に考え、支え、整える」という共通の目的を持って働いている。

専門性

社会福祉士や精神保健福祉士、保育士などの国家資格を持つ職員が多く在籍している。

5つの部門と役割
  • 地域福祉課:地域のつながりをつくる
  • 相談支援課:生活の相談にのる
  • 在宅支援課:必要な介護や福祉サービスにつなぐ
  • 学童保育課:子どもの成長をそばで支える
  • 総務課:組織の運営を支える
組織の規模

常勤・非常勤職員159名、夏季等の学童アルバイト約50名、役員43名を含め、全体で約250名が活動している。

相談支援の柔軟なアプローチと、ひきこもり支援における具体的な成果・取り組み

野洲市社協は、資金貸付を含む生活のお困りごとの総合相談窓口であり、特にひきこもり支援では「適切な距離感で関わり続けること」を大切に訪問や居場所づくりを行っています。じっくり時間をかけて寄り添うことで、16年間ひきこもり状態だった方が一般就労につながった嬉しい成果も生まれています。

お困りごとの総合相談窓口

生活の中の悩みごとを何でも受け付け、社協で解決できることは一緒に伴走し、必要に応じて市役所や専門機関へつなぐ。

経済的な不安への支援

生活費の不足、引っ越し、子どもの進学費用など、基準を満たす対象者への複数の資金貸付制度を扱っている。

ひきこもり当事者・家族へのサポート訪問による関係づくり

「適切な距離感で関わり続けること」を大切に、社会へ一歩踏み出すサポートを行う。16年のひきこもりから一般就労へ 昨年度、職員や関係機関が時間をかけて寄り添い続け、居場所での軽作業等を経て就職につながった成功事例がある。

「安心できる居場所」の提供

家の外で自由に過ごせる当事者向けの居場所(軽作業やゲームなど)や、家族同士が交流・学習できる場を月に数回提供している。

学童保育や子育て支援の歴史・仕組みと、地域ボランティアのつながりづくり

野洲市社協は、市内全6校区の学童保育所や、地域で子育てを支え合う「ファミリー・サポート・センター」を運営しています。また、「誰かの役に立ちたい」という住民の思いをカタチにするため、ボランティアのマッチングやイベント用具の貸し出しなどを行い、地域のつながりと安心の暮らしを支えています。

学童保育所の全校運営

合併前の保護者会運営を引き継ぎ、27年の実績を経て、現在は野洲市内全6小学校区の学童保育所を社協が安定的に運営している。ファミリー・サポート・センター(子育ての支え合い)支援を求める「おねがい会員」と、有償ボランティアの「まかせて会員」等を結ぶ仲介役を担う。ベテラン世代が「地域に孫が増えた」とイキイキ活躍中(まかせて会員は大募集中、講習・保険あり)。

「誰かの役に立ちたい」を届ける活動ボランティアの登録・マッチング

自治会の催しやサロン活動へ、ボランティアを紹介する。

権利擁護事業やケアプラン作成による「個別の安心」と、見守り活動による「地域の安心」のつながり

野洲市社協は、金銭管理やケアプラン作成を通じて高齢者や障がいのある方の生活を個別に伴走する一方、災害時にも機能する「見守り支え合いネットワーク」を推進しています。日頃から地域のつながりを育むことで、住民同士の小さな気づきと「少しのおせっかい」が生まれ、困りごとの早期発見と支援につながっています。

地域福祉権利擁護事業(約80世帯が利用)

判断能力が十分でない高齢者や障がいのある方と契約し、日常の金銭管理(通帳の預かりなど)や福祉サービスの利用援助を行い、安心した生活を支える。

ケアプラン・計画作成の役割

高齢者や障がいのある方、その家族の困りごとを整理し、適切なサービスへつなぐことで、不安や生活のしづらさを軽減する。

見守り支え合いネットワークの推進

災害時の安否確認などは専門職だけでは難しいため、自治会や民生委員と連携し、サロンやこども食堂などの「地域のつながり」を深める。「少しのおせっかい」が早期支援に。日頃のつながりから生まれる「最近見ないな」「様子がおかしいな」という小さな気づきが声かけ(おせっかい)につながり、困っている人を早期に支援へつなぐきっかけとなる。

人権研修の具体的な計画と、基本方針が組織の連携にどう役立っているか

野洲市社協では、主体的な内部研修や外部講座への参加、関係機関とのケース会議を通じて包括的な人権・福祉の対応力を高めています。明確な答えがない課題に対しても、基本方針である「おたがいさま」と「少しのおせっかい」を共有することで、職員の価値観を揃え、組織内の横の連携を強める効果を得ています。

日々の業務と人権

社協の活動そのものが住民の人権を守る修練であり、その上で体系的な内外の研修計画に取り組んでいる。

内部研修の進化

これまでの「DVD視聴+グループワーク(年2〜3回)」から、今年度より職員の有志がテーマを企画する主体的な形式へと移行する。

外部研修・所属別研修の活用

「びわ湖南部地域 人権啓発 連続講座」等に希望者を募って参加し、外部の専門的な視点や気づきを全体で共有する。

複合的課題への対応力強化

虐待防止、支援技術、8050問題やひきこもり等の複合課題に対し、関係機関との合同研修やケース会議を通じて包括的な対応力を高めている。

基本方針がもたらす組織の効果

答えがない課題に向き合う際、「おたがいさま」と「少しのおせっかい」という言葉を共有することで、職員の価値観や支援の方向性がまとまり、組織内の横のつながりや連携意識を高める効果を生んでいる。

職場で周囲に見えにくい悩みを抱える人へのアプローチと、相談先としての社協の役割

職場で家庭の事情(介護や病気等)を一人で抱え込み、深刻化させてしまう人がいます。どこに相談すべきか迷う場合は、「おたがいさま」と「少しのおせっかい」の精神で声をかけ、「とりあえず地域の社協へ」と促してください。相談窓口につながることで安心でき、結果として職場の働きやすさや元気につながります。

見えにくい家庭の事情

介護、病気、ひきこもり、経済問題など、仕事のパフォーマンスに影響する悩みを一人で抱え込み、声を上げられない人が職場にも存在する。

孤立による深刻化の防止

誰にも言えない状況が続くと事態がさらに深刻化するため、まずは周囲の「大丈夫?」という少しのおせっかいな声かけが重要になる。

困ったときの相談先

「とりあえず社協へ」どこに相談すべきか分からない場合は、全国どこの地域でも生活・家庭の困りごとの入り口である「社協」を勧めてほしい。

伴走と専門機関への橋渡し

社協がすべてを100%解決できるわけではないが、解決に向けて一緒に伴走し、必要に応じて市役所や専門窓口などの適切な場所へつなぐ。

めざす効果

周囲の気づきから相談につながることで、働く仲間が少しでも元気に、安心して活動できるようになり、それが職場の「働きやすさ」へもつながっていく。

デジタル時代におけるリアルなつながりの重要性と、住民が社協に関わるさまざまな方法(参加の仕組み)

AIやネットが普及した現代だからこそ、地域のイベント等を通じたリアルな「顔の見える関係」が安心の土台となります。社協では、ボランティアや災害への備え、寄付やフードドライブなど、一人ひとりが「できる範囲」で誰かの役に立てる仕組みを用意しており、地域と職場がともに元気になるまちづくりを伴走します。

リアルなつながりの重要性

AIやネットが便利な時代だからこそ、生活の安心や支え合いには、自治会のイベント等を通じた「顔の見えるリアルな関係」が不可欠である。

「誰かの役に立ちたい」を叶える社協の仕組み

住民がそれぞれの“できる範囲”で参加・協力できる窓口を用意している。

活動での協力

ひきこもり当事者の職場体験や軽作業への協力・登録、ボランティアの開始。

災害への備え

災害ボランティアセンターへの事前登録や、訓練への参加。

資金・物資での協力

社協会費、寄付、共同募金、フードドライブ(食料支援)など。

結び(目指すまちづくり)

すべての思いが100%実現できなくても、社協は解決に向けて一緒に伴走する。「住みたい、働きたい、地域も職場もみんなで元気に」と思えるまちづくりを、皆さんと一緒に進めていきたい。

全体を通して

「おたがいさま」と「少しのおせっかい」というテーマが、社協の組織概要から具体的な活動、職場の働きやすさ、そして地域コミュニティの活性化へと見事に繋がる素晴らしい構成のお話でした。

質疑応答

1) 職員の人権意識を高めるものとして、社協の職場の研修としてどのような内容で取り組んでおられるのでしょうか。

人権研修についてのご質問ですけれども、ここ数年ですと、先ほど言いました通り、DVDを見た後に、グループワークみたいな形で職員同士で話し合うそういう形式で研修しております。DVDを見た後に、大体30分ぐらいですね。DVDの内容ですけど、記憶してますのが例えばデートDVであったり、LGBTQ、あと職場内でのハラスメントみたいな、最近でしたらこのようなものもありました。

2) 自校の学童保育所は、現在、利用児童が多く校舎内の教室を使って見てもらっています。これから増加していくとなると施設の拡大・計画・見通しなどを教えてください。

学童保育所については我々の立場としましては市の建物を利用しています。その建物を指定管理というふうな形で指定を受けて運営している立場になります。市の建物を整備していくっていうのは市の役割になってくるので、我々が計画する形ではないんですけれども、今現在運営している学童等の中でも、例えば北野学童でしたら、音楽室で借りて、ゲームしたり、三上小学校の中に学童専用の部屋があったり、そういったところがあるのかなというとこですね。小学校6年生が帰ってからしか使えないっていうところがあって、専用の部屋でしたら、既に学童保育所っていう形で構えているんですけど6年生が帰ってから学童の準備をするみたいな形でちょっと大変なところもあって、そんなところを市と提言しながら協議をしています。あと中主町の方ですが、最近、新興住宅があったりとかそういったこともあるので、そういったことも踏まえて、協議しながら進めていきたいというふうに考えておるところです。

3) 社協で引きこもりの子の居場所を開催され、そこで軽作業をされているとのことでしたが、どのようなことをされているのでしょうか。

社会福祉協議会(社協)が運営するひきこもりの方の居場所「まだ名前のない居場所」における、軽作業(働く体験)の具体的な内容や取り組みに関するものです。

軽作業(働く体験)の具体的な内容

月1回(第1火曜日)の開催時間のうち、1時間を「働く体験」に充てており、以下のような簡単な作業を行っています。封筒詰め作業:民生委員・児童委員、日本赤十字社、共同募金などの配布物の封入。部品の組み立て作業として市内の作業所から協力を得て分けてもらった、簡単な部品の組み立て。

取り組みの特徴と成果

参加への配慮として参加者には交通費として500円が支給され、皆さん真面目に取り組んでいる。

居場所の雰囲気

作業後の時間は、お茶を飲んだりゲームをしたりして和やかに過ごす。回数を重ねるうちに表情が穏やかになり、自発的に話せるようになる変化も見られる。

次のステップへのつながり

この体験をきっかけに「実際の作業所に通ってみたい」と希望して通所が実現した人や、就労(就職)にまでつながった人も出ている。

地域や企業へのお願い仕事(軽作業)の募集

納期や価格の条件はあるものの、働く体験にちょうど良い作業(軽作業)があれば、ぜひ地域・団体・企業から社協へ声をかけてほしいと呼びかけている。

周囲の声かけ

ひきこもりに限らず、困っていても自らSOSを出せない人が地域にいるため、「少しのおせっかいの気持ち」で声をかけたり、社協へ相談したりしてほしい。

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